新・花鳥風月

@mitchan5のブログです。

興味の無い方はスルーして下さい

専門学校に通っていた頃、戦争物のパソコンゲームを仲間内で作ろう!と言う話になりました。
「俺がシナリオを書く!」といってわたしが書いたお話が、これまた古いフロッピーディスク
見ていたら出てきましたのでここに書き留めておきます。
結局このゲームはオープニングの場面だけが作られて放置され完成に至りませんでしたヾ(〃^∇^)ノ

※話の冒頭部分だけですが意外と長いので興味の無い方はスルーして下さい。
※作成途中だったため、時代考証、内容の検証等全くしておりません。

北太平洋の死闘 

第一章  逆光

暗黒の中、風の音と波の音。
あちらこちらから、微かに見える赤や緑の光の点。
コンソール以外の灯を消したブリッジに、ディスプレイの緑色の光に照らされた二人
の人影が見える。
中央前方の操作コンソール前に立ってキーをたたいているのは、海上自衛隊最初の本格的
自衛空母「赤城」の艦長に最年少で抜擢された、中田一浩一等海佐
もう一人、一番奥の司令長官席に座っているのは、この赤城を旗艦とする海上自衛隊
「GF-1」の指令長官の西田 仁海将補である。

「長官、少しお休みになってはいかがですか?」

と、コンソールに顔をむけたまま中田は言った。
XEVIOUS-3によって全ての機関は最適にコントロールされ、もはや多く
の人の手を借りずに、自艦のみならず、最大二百五十六隻もの艦船をコントロールし、
状況をコンソールにディスプレイしているのである。

「ありがとう。しかし、眠れそうもないな。」と、西田はこめかみを押さえた。

「未明には、演習海域に到着します。それまでに少しお休みにならなければ・・・。
これから二十日間も演習が続くのですから。」振り返って中田が表情を緩めた。

「君こそ少し休んだ方がいい。もう二日も寝てないじゃないか」

「ありがとうございます。しかしもう少しシステムのチェックがありますので..」

今回の演習は艦隊が結成されて始めての合同演習である。これまでは、各艦個々に
訓練、演習を行ってきたが、ようやく今回はじめて、艦隊合同の演習がおこなわれるの
である。今回の演習ではコントローラーであるXEVIOUS-3の指揮能力のデータ
収拾が主な目的であり、それに伴う実弾発射制御テストなども行われる予定である。

二〇一七年、日米安保条約が無効になって七年目、海上自衛隊は自らのシーレーン
守るため、「自衛空母」と称する本格的航空母艦を就役させた。
その一番艦が、あの第二次世界大戦連合艦隊旗艦として活躍した空母「赤城」と同じ
艦名の空母である。開発が始まった二〇〇八年当初は、ひらがなで「あかぎ」であったが、
安保条約破棄後、漢字の「赤城」に改正された。
全長三三〇メートル、最大排水量四万五千六三六トンの、三井造船製。三菱重工が設計
製作した、一〇式艦上戦闘機二十二機をはじめ、同じく石川島播磨重工が設計制作した、
一四式艦上戦闘攻撃機十八機、対潜索敵能力の優れた早期警戒電子戦機、富士重工
一六式艦偵四機、さらに対潜ヘリ、雷電六機などの高性能航空機を搭載している。
また固定武装として、〇六式対艦ミサイルランチャー二十四基、三十ミリ・バルカン
ファランクス六門を備え、さらに核弾頭装着可能な対潜ホーミング魚雷発射管左右四門
ずつを装備してている。
最大船速五十八ノット、三十六ノットの巡航速度で六万キロの航行が可能な原子力超電動
推進双胴艦である。
そして、これら全てのコントロールを行っているのが、富士通と日立が共同開発した
ニューロコンピュータ「XEVIOUS-3」である。
このような空母が二年後には四隻に増え、GNP5%を越える高額な予算により新造された、
ミサイル巡洋艦長門」「伊勢」など六隻に加え、現在さらに八隻が建造中である。

そして・・・・・・・、

海上自衛隊初の本格的機動部隊「GF-1」、通称「太平洋艦隊」。
旗艦「赤城」、同じく同型艦で通常GF-2旗艦の「信濃」、ミサイル巡洋艦長門」「陸奥
「霧島」「金剛」、イージス艦「白雪」「初雪」「吹雪」「初月」「秋月」「冬月」計十二隻の
大艦隊は、初の艦隊合同演習のため母港である横須賀を出港し、目的のミッドウェー島近海に
近づきつつあった。
二〇一七年六月五日の夜半のことである。



一九四二年六月五日ミッドウェー島北西海上午前四時

まだ薄暗い海面を、南南東に向かう漆黒の艦影。


空母赤城を旗艦に、正規空母四、戦艦二、重巡二、軽巡一、駆逐艦十二の大艦隊である。
赤城をはじめとする空母を円形陣の中心に置き、別艦隊のミッドウェー島攻略を空から支援するために、
去る五月二七日、母港である呉の柱島を出港してきた。

「草鹿です」と参謀の草鹿龍之介が、長官室のドアをノックした。
「入れ!」艦隊の指令長官である南雲忠一である。
「あと三十分で索敵機が発艦できます。ミッドウェー島攻撃隊の爆装も、ほぼ完了しました。」

草鹿は軽く敬礼すると報告した。

「わかっていると思うが、今回はミッドウェー島攻略が真の目的ではない。敵の空母を沈めるのが
真の目標だ。もし敵空母が発見できれば、それを全力を持ってしても叩く。だが、おそらく敵機動
部隊はまだハワイ辺りをうろついているだろうがな」と、不敵な笑顔で答えた。
「ではそろそろ艦橋に上がるか...」南雲忠一はゆっくりと立ち上がり、遙か彼方、日本の方角に
向き直り深々と一礼した。草鹿も慌ててそれにならった。

南雲忠一は知らなかったが、この時すでに米機動部隊は日本軍の暗号を解読し、ミッドウェー島付近の
洋上で南雲の艦隊を待ち伏せていたということは後に有名な話である。

四隻の空母の飛行甲板には、爆装を終えた九七式艦上爆撃機が所狭しと、エンジン音を響かせ、今か今かと
出撃命令を待っていた。その中の一つ、空母「飛龍」の艦橋で艦長の山口多聞少将が副官の芳賀中尉に向
かって呟いた。

「本当に、敵機動部隊はいないのだろうか...」。
「はい、今のところの情報では、ハワイ島近海に展開しているとのことです。」
「だが、万が一のこともある。もし敵機動部隊が発見できればすぐにでも雷装に切り替えることの
できるよう準備させておくように。何か解らないが予感がするのだ。予感が...」

山口多聞少将は顎を右手で触りながら言った。

「長友長大大尉入ります!」空撃の打ち合わせを終えた長友長大大尉がブリッジに上がってきた。
「艦長!ただ今より第一次ミッドウェー島攻撃隊発艦致します。」敬礼とともに長友長大大尉が報告した。
「うむ。大尉の活躍に期待する」
「はっ!」お互い敬礼を交わすと、長友長大大尉は踵を返した。


二〇一七年六月五日午前二時

「長官!こちらにおられたのですか!」と、通信課の宮脇雅嗣三等海佐がブリッジに入ってきた。
「配備レベル5だったので、長官室におられると思い、連絡を入れたのですがつながらなかったので、
お探ししていたんです!」
通信課はブリッジの下、艦のほぼ中央にある、オペレーションセンター横にあり、通常ブリッジとは
艦内電話でつながっている。

「報告します。先頭を行く「白雪」から、気象が激しく変化していると通信が入っておりますが」と、
紙片を手渡した。
「気圧が下がっているのか・・・」西田がつぶやく。
「配備レベルを上げ、全員呼集しましょうか?」
中田は、(このまま下がり続けると時化るな)と思い、外を見た。濃霧が艦首をも隠している。
西田が席を立ちかけた丁度その時である。
一瞬、すべての照明が消え、辺りのコンソールからプラズマのようなものが飛び散り、ブリッジにいた三人は、
何かに弾き飛ばされた様にフロアーに倒れた。その直後、四万余トンもある巨艦が、何かにぶつかったかの様な
衝撃と共に前のめりに停止した。

「ううっ・・・」中田は、自分の体の痛みで意識が戻った。
「あれからどの位経ったのだろう・・・そうだ!長官は?」

中田は痛みに堪えながら、コンソールに手を掛け立ち上がり、辺りを見回した。

「長官!」中田は、ブリッジのフロアーに倒れていた西田に駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
「少し腕が痛むが、大した事はないよ。」
「どうしたんだ?金剛とでもぶつかったのか?」

西田はこの濃霧で、「赤城」の前方数キロを行くミサイル巡洋艦の「金剛」と衝突したと思ったのだ。

「解りませんが・・・おそらく遊動砂州に乗り上げてしまったのではと・・・」

中田は急いでコンソールに足を運び、海図画面をディスプレイに呼び出した。
意識を取り戻した宮脇は、他の艦に知らせようとブリッジを後に一階下の通信室に急いで向かった。

その頃ようやく艦内が騒がしくなってきた。

「中国の原潜だ!」

などと騒ぐ者も居たが、中田の

「我が艦は、遊動砂州に遭遇したもようである。各員担当部署を点検報告せよ」
という艦内放送で一応は治まった。

「他の艦も、同じ様な事態になっているそうです!」通信室からの艦内電話で宮脇が報告した。
「先頭の白雪は艦首右舷の損傷部から浸水している模様です」
「どういう事なんだ?」西田は、コンソールを操作している中田に尋ねた。

中田は、NASDAが秘密裏に打ち上げた静止軍事衛星、「梵天」からの海図情報表示パネルを見ながら
キーをたたいていた。

「この辺りに砂州は無い筈なんですが・・・ん!!」中田は、コンソールを操作する手を止めた。
「XEVIOUS-3の艦隊制御機能が停止しているようです!!」

艦隊制御情報表示パネルに大きな赤い文字でアラート表示が出ている。

「なにっ!」中田の言葉に、西田は自分の顔から血の気が引いていくのがわかった。

思わず中田のもとに駆け寄り言った。

「それでは今回の演習は出来ないではないか!どうにか修理出来ないのか?」

この演習の為に長年、巨額の予算を掛けて準備をして来たのだ。
あと二年で退官の身の西田 仁海将補は、こんな不祥事で恩給を棒に振りたくなかった。
その時、また宮脇がブリッジにかけ込んで来た。

「横須賀の海上自衛隊艦隊本部に連絡しようと思ったのですが、回線がつながりません。艦隊内の通信
は可能ですから、通信機の故障ではないと思うのですが・・・。」
梵天の衛星中継回線は試したのか」西田は、顔面蒼白で問いただした。
「いえ。梵天からのすべての信号が受信できません。機能を停止している模様です。」

混濁した意識の中、西田の頭の中にふとある想像が浮かんだ。もしかすると「核」が世界中に落とされたのではないか。
さっき艦の受けた衝撃は、ミッドウェー島に落ちた核の衝撃はではないかと・・・。
そうすれば、今の状況が全てうまく説明できるのである。
しかし、艦隊本部から何も通報がないのはおかしい。核が使われる前には、少なくとも二十分前にはわかるはずである。
それなのに何も連絡がないのは・・・。

・・・もしかして、米中が共同で日本と我が艦隊を消滅させようとしているのでは・・・。


続きはWebで(笑)